札幌シェールズ

8月9日。野球の日に取材させて頂いたのは、「北海道女子軟式野球連盟」副理事長兼事務局長であり、NPO法人「北海道野球協議会」理事事務局長の竹中揚子さんです。これまで野球日本代表に3度選出されたり、今でも女子軟式野球チーム(札幌シェールズ)の監督兼選手を務める竹中さんの野球への愛がビシバシと伝わるインタビューとなりました。

 

少年野球を始める女の子が増えてきた


---竹中さん、本日は宜しくお願いします!

竹中さん:こちらこそ宜しくお願い致します。

---今回は竹中さんの女子野球に対する想いと、これまでのストーリーを聞かせて頂きたいと思ってます。早速ですが、これまで竹中さんが北海道女子軟式野球連盟や北海道野球協議会で活動されてきて、感じていることを率直に教えていただけますか?

竹中さん:はい。まず、子供たちがやりたいと言う野球、女の子たちがやりたいと言う野球の環境がまだまだ整ってないと感じています。

例えば、お母さんたちが少年野球のお当番、送り迎えが厳しいという理由で子どもに野球をやらせてあげられないというケースが多いんです。

子供が野球をやりたいと言っても、親御さんの理由でできないという家庭が多いのが現状です。

少年野球に入れることが出来ないというお母さんからは「共働きでウチの子は少年野球に入れてあげられないから、1時間とか1時間半くらいで親に負担も少ないスクールはありませんか?」と言われることが多いですね、ここ数年は。

札幌シェールズ
竹中さんのポジションはキャッチャー。理想のキャッチャー像は古田敦也さん。

---僕が少年野球をやってた15年、16年前とは全く違う状況かもしれないですね。

竹中さん:そうかもしれないですね。今は、監督さんのお昼ご飯も当番制で親御さんが交代で作ってくるチームもあるんですよ。飲み物からお弁当まで用意して。

---えっ!?そんな事まであるんですか?親が交代で?

竹中さん:はい。そうなると親御さんたちも入りにくいので、そのチームには子供を入れさせられないというケースもありますね。

「ポルテ」という全国展開してるベースボールスクール(塾と似ている)があるんですが、そこは北海道では人気が出てきてて、かなり人数も増えてきてるそうです。

ただ、少年野球チームには全然入ってこなくて、正直少年野球界は低迷してきてるのが現状ですね。野球を子供たちがやりたいと言っても出来ないという現実があります。

---子供が野球をやりたくても、チームに入りたくても、できない・入れないというのはなんとかしたいですよね。

竹中さん:なんとかしなきゃいけないですね。ただ、チームに入る女の子は増えてるんですよ。今だと1チームに2、3人くらいは女の子がいますから。

札幌市の少年野球チームだけで132チームあるんですけど、その中で女の子は60~70人くらいいます。

---僕らの時(15年前くらい)は全然いなかったのに。1チームあたり2、3人もいるんですね!僕の頃は、1チームに女の子が1人でもいたら珍しそうにみんなで見てましたよ。

竹中さん:ですよね。今は女の子が4番張ってたり、キャプテンの背番号(10番)をつけてたりするチームも多いんですよ!

小学5年生、6年生くらいだと女の子の方が身長があったり、柔軟性もあるから小学生では男の子よりも身体能力が優れてる子は多いんです。

昔は、中学の野球部に入る子もいたんですけど、中学校2年生くらいになると女の子は男の子の体力にどうしても負けてしまうんですよね。ずっとそんな子たちを見てきて、さすがにやっぱり限度があるよねーと思ってました。

女の子だけのチームでやらせてあげた方が試合に出れるチャンスも増えるし、何より思いっきり野球ができるだろうし、次のステージで野球をやりたいと言う女の子達にしっかりした環境を整えてあげたいという想いから、今は自分のチームでジュニア(中学生)と大人(高校生以上)のチームを運営してます。

それが派生して、いろんな場所で同じような仕組みを持ったチームが出てくるといいなぁと願ってますが、チームを立ち上げるのは私の仕事なので、まだまだ頑張らないといけないですね!

札幌シェールズ

昔は親との一悶着が必ずあった


---僕らの時は女の子が中学以降野球ができる環境ってなかなか整ってなかったと思うので、竹中さんの強い想いから続けている活動が広がってくれば、野球をのびのびできる女の子たちが増えていきそうですね。


竹中さん:そうなるといいなと願ってます。ジュニアチームを卒業した後は、大人のチームに入って、大人の大会に出るという流れになるので、ステージが変わっても野球がやりやすくなるんじゃないかと思ってます。

それから、ジュニアと大人で一緒に練習をやってると相乗効果もあります。ジュニアに越されたらいやだなー!やばいなー!!って大人が頑張ったり(笑)

---相乗効果ですね(笑)ジュニアと大人の大会は全く別なんですか?

竹中さん:北海道の大会は誰が出ようと大丈夫なんですが、基本大会は別です。

今年、全日本軟式野球連盟主催で初の中学の全国大会が6月にあったんです。それは今年の1月に開催が決まったものだったので、ウチはジュニアで出ようと決めて、ほぼ中学1年生の子達で出てみたんですけど負けてしまいました。

---大人の全国大会には中学生は出れるんですか?

竹中さん:大人のチームでの予選に中学生は出ることができるんですが、今回(第27回全日本軟式野球選手権大会:8/6-8/8)の全国大会の登録は20名のうち中学生を登録できるのは5名までって決められてるんです。

---高校野球の夏前のメンバー発表みたいに、選考するのは残酷な面もあったりしますよね。

竹中さん:そうですね。1チームできるほどのジュニアチームから5名を選ぶというのは辛いんですけどそれは仕方ないですね。

メンバーを決める前に、みんなにまずは行けるかどうかの確認をします。旅費(遠征費)がすごいかかるので、親御さんの事情で行けないというケースも考えられますから。

漏れたメンバーは、できるだけマネージャー登録やスコアラー登録でベンチに入れてあげるようにしてます。その子たちは試合には出れないんですけど、ベンチに入れば一緒に戦ってる気持ちにはなれると思うので。

---選考で親からの反発はないんですか?

竹中さん:もともとウチのチームは大人だけのチームだったんですが、途中から子供を受け入れるようになってからはいろいろありました。

「どうしてウチの子を使ってくれないんだ?」などの一悶着は必ず。

でも、そこで自分の意志が折れたらダメですし、「合わないんだったら辞めて頂いても結構ですよ!」くらいきっぱり言わないと、親御さんがグイグイ介入してきてしまうので、そこはきっちり線引きしないとダメだと思ってます。

いろんな経験を踏まえた結果、ウチのチームは1回体験に来て「すぐに入りたいから入ります」じゃなくて、最低4回は体験をしてもらって、いろいろと感じ取ってもらってからじゃないと入れないという風に規約で決めるようにしました。プラス私と学生、親御さんでじっくり話をしてから、最終的に入るかどうか決めてもらうという形ですね。

チームのルールや方針をある程度わかってもらった上で入れるようにしたので、今では誰も戦術や選考に関して介入しません。もちろん規約上は、上から目線じゃなく柔らかい言葉で書いてますけどね(笑)

---まずは見てもらって感じてもらって、話をしてからという流れなんですね!その仕組みは、「入ってみたら意外とギャップがあったから」という理由ですぐに辞めてしまう子も減るように思います。お互いにとっていいことですね!

竹中さん:そうですね。仕組みが整っていくと同時にチームは年々強くなってきてると感じてます。

肩書きが欲しいからかわからないですけど、チームが強くなればなるほど指導者として俺がみてあげようか?と言ってくる人が増えるんです。(笑)

そういう時にもまだまだ女だからという見方をされてるんだろうなと感じるので、その度に悔しさはありますね。

---そんな人がいるんですね(笑)。ただ、それも外からも認められてきているという事とも受け止められますし、少しづつ形が作られてきたという証でもありますね!

竹中さん:そうですね!今はおかげさまでジュニアのチームと大人の一般チームで紅白戦をしたり、いろんなパターンの練習ができてたり、親御さんたちも応援してくれてますし、自主的に壮行会もやってくれたりと、みんなで一緒になって作ってるという感覚はあります。

基盤がここ数年でようやく作れてきたかなという実感はありますね。

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仲間の姿と言葉から「ここで再出発しよう」と決めた


---女子プロ野球も今かなり盛り上がってますもんね!!

竹中さん:ウチのチームからも女子プロ野球選手になってくれるといいな!と思ってます。

今、ビックカメラでキャプテンやってて、全日本でもキャプテンやってる山本優っていう選手がいるんですけど、山本もウチのチームで育ったんです。

当時からセンス抜群だったので、高校3年間は私の信頼してる指導者(ソフトボール部監督)に3年間預けたら、グーンと伸びて卒業後は実業団に行って、今では全日本のキャプテンになりました。

(参考リンク:山本優内野手プロフィール|ビックカメラ女子ソフトボール)

そういえば、今回のW杯でマドンナJAPANに選出された志村亜貴子もウチのチーム出身なんです。最年長の金由起子も一緒にやってましたし。

(参考リンク:北海道日本ハムファイターズ公式HP
女子代表|野球日本代表 侍ジャパンオフィシャルサイト)


---札幌シェールズ、すごい輩出してますね!!

竹中さん:そうなんです。少しですけど貢献してます(笑)。ただ、選手には自分のチームだけにこだわるんじゃなくて、学んだことを生かしていろんな場所で活躍してくれたらいいなと思います。

だって、本人にとって将来性があった方がいいですよね。やるからには趣味的にやるより、それが生かされるところで活動した方が長い目で見たらいいだろうなと思ってます。

---竹中さんはソフトボール界ではかなりの有名選手だったと伺ってるんですが、野球を始めたのはいつ頃なんですか?

竹中さん:ずっとソフトボールをやってきて、23歳の時に女子野球を始めました。元々プロ野球は見てましたが、「女子野球があるんだけどどう?」って声をかけて頂いたのがきっかけです。

最初は、「上から来るボールを打つのってどんな感じなんだろう?」って興味があって始めました。

実は誘われる少し前に、それまで自分の所属してたソフトボール部員のフェードアウトが増えてきて、結局廃部になったんです。ちょうどそのタイミングでそのお話があったんですよね。

---すごいタイミングですね!!

竹中さん:本当にたまたま。有難いですね。ウチの姉がソフトボールを高校でやってたんですけど、その当時のキャプテンの方から「揚子ちゃん!ソフトボールやらないで、今何やってるの?」って声をかけてくださって。

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---ちなみにソフトボールが廃部になった時はショックでしたか?

竹中さん:うーん、休みなくソフトボールをやってましたし、自分の時間もほぼなくて正直疲れてたので、そこまでのショックはなかったかもしれません。ずっとソフトボールをやってたので、少し遊びたいなーと思ってた時期でもありました(笑)。若気の至りですね。

---そんな時期もあったんですね!実際に野球とソフトボールを経験してみてどうでしたか?

竹中さん:距離も違いますし、ボールの大きさも違うので、キャッチボールでは最初真下にボールが落ちました(笑)

カーブも見た事なかったので、「うわーー!野球って濃いなー!!」って、随所に野球の奥深さも知りました。

---だいぶ刺激があったんですね。

竹中さん:はい。私の高校(ソフトボール部)はインターハイに行ってたチームだったので、勝ってあたり前の環境にずっといたんです。やれて当然。できて当然。勝って当然だったので。

ただ当時の札幌シェールズは、プロ野球が好きな素人さんが集まってて、必死にボールを追いかけてる姿が印象的でした。

それを見たときに天狗になりかけてた自分が感動して「ここで初心に返って一からスタートしよう!」と思えたんです。

そこにだめ押しになる一番の原動力になったのは、「みんなで日本一を目指すから一緒に頑張ろうよ!」って仲間が言ってくれたことです。

全然プレーはうまくないのに、その言葉の力強さや一生懸命ボールを追いかける姿勢に共感して、自分も一緒にこのチームに貢献できたらいいなと思ったのを今でも覚えています。

「女子だからなーって思われる距離はもういい」


---そういえばこの間、埼玉アストライアのプロ野球選手(川端選手と中野選手)とイベントでご一緒させて頂いたんですけど、お二人から女子野球をもっと盛り上げたい!という意志を強く感じました。

竹中さん:女子プロ野球選手すごい一生懸命ですよね。地道な活動を練習や試合で疲れてる中で、動いてるんですから。

プロ野球選手って華やかなイメージがありますけど、彼女たちはいろんなところを駆けずり回って動いてるので、本当にすごいと思います。

---女子野球、これからどんどん盛り上がって欲しいですね!

竹中さん:そうですね!ただ、課題がまだまだ山積みなので、少しずつクリアしていきたいですね。

例えば、硬式と軟式があるんですけど、硬式は一般の距離と一緒なんですが、軟式はちょっと距離が短いんですよ。投本間は17メートルで、塁間も25メートルしかなくて。

「その距離ってどうなの?」ってみんなで協議してます。

今、バットも進化してビヨンドで飛ぶようになってるんですよね。かつレベルもアップしてきてるので、「この距離じゃ短いんじゃない?」という声が多く挙がってきました。

愛知県の碧南市というところで女子野球の交流戦があるんですけど、そこでは女子だってこの距離でもできるんだよってアピールも込めて、一般の距離でやるんです。それでもちゃんと併殺も取れるし、より野球らしくなるんです。

同じ距離で、ただボールが違うだけにしたほうが、軟式から硬式へ、硬式から軟式への移行も選手にとってみればスムーズにできると思います。昔はその距離でよかったかもしれませんが、今は色々と変化してきてるので考えなきゃいけないですね。

ホームランゾーンも全国大会にないんです。それもポールでも置いておいてもらって、ホームランって分かりやすくした方が盛り上がると思います。

---それは盛り上がりますよね。僕自身、少年野球でホームランゾーンがある球場で試合したときは興奮したのを覚えてます。

竹中さん:そうですよね。ホームランゾーンがあるグラウンドで試合をすると、毎試合ホームランが出るんですよ。ホームランがあると審判のグルグル回すジェスチャーがあって、観客も湧くし、選手がゆっくりダイヤモンドを回る姿とか、やっぱりランニングホームランじゃないホームランがあると盛り上がるんですよね。何より、選手のモチベーションにも繋がりますから!

---まだまだいろんな問題があるんですね!その中でも、竹中さんが一番変えたい部分ってどこですか?

竹中さん:やっぱり女子だからって思われるのが嫌なので、そのイメージは変えたいですけど、短い距離がそれを反映させちゃってる気がしてます。

女子だからなーって思われる距離はもういいんじゃないかなと。野球をやろうよ!って。野球をやれる技術はもうみんな持ち合わせてるので、やっぱりそこの部分ですかね。

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子供たちには目標に向かってとことん突き進んでほしい


---竹中さんがこれまで野球から教わったことって何ですか?

竹中さん:どのスポーツにも言えることですけど、精神的なものが多いですね。

強い精神を持たなきゃいけない!というのはすごく感じますし、心が強ければ結果に繋がると信じてます。

野球は、少しでも気を許したり、弱気になれば、すぐ結果に反映されてしまう恐ろしさがあるのを知りました。普段からいろんな失敗をして、いっぱい引き出しを作っておけば、より多くの準備ができると思います。

一つひとつ壁を乗り越えていけば強くなると思いますが、今の若い子たちは壁にぶつかったら逃げようとする子が正直多いです。

これまで強いチームの監督さんといろんな話をしてきましたが、強いチームの監督さんは技術よりは気持ちの事を言いますよね。あとはひたすら基本の話しかしません。

この前も強いチームの試合前の練習を見てたんですけど、ひたすらバント、ひたすらティーだけでした。そのスタイルは昔と何も変わってないそうで。その真意を聞いたら、監督さんが「基本を常にやっておかないと、応用もできないし、すぐに忘れちゃうんだよ!この子達は!!」って一言だけ言ってましたね。

---強いチーム、強い選手は気持ちの面と基本をやはり大事にしてるんですね。

今日はお忙しい中お時間を頂きありがとうございました!最後に、子供たちや若い子へメッセージがあればお願いします。

竹中さん:こちらこそありがとうございました!

今、子供たちは親にすごく気を遣うみたいですけど、遠慮せずやりたいことはとことんアピールして欲しいですね。普段の行動で「頑張ってるからやらせてみるか!」って親に思わせるくらい。

家のお手伝いをするとか、普段の行いを少しでも変えれば、親は後押ししてくれるはずです。

遠慮せず、やりたいことはアピールして、だからこそ普段からやるべきことをやろうよ!って思います。目標に向かってとことん突き進んで欲しいですね。


------インタビューを終えて-------


インタビュー中に感じたことは、竹中さんの野球へのまっすぐな愛や、女子野球の可能性を少しでも広げたい!若い世代や頑張ってる選手の為に環境を整えてあげたい!という素直な熱い想いです。

これまでとても偉大なキャリアを積まれている竹中さんですが、とても謙虚な姿勢で丁寧に一つひとつの質問に答えてくださいました。

竹中さんの想いが詰まった女子野球の今後が、ますます楽しみになるインタビューとなりました。ご縁を繋いで頂いた方々、そして竹中さん、本当にありがとうございました。


2016-08-10-14-34-26
インタビュー終了後。左:ライター高松、右:竹中さん

NPO法人 北海道野球協議会
北海道野球協議会

札幌シェールズHP
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